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エドワード6世 1547〜53年 S2482Edward VI Crown直径約41mm 約30.1g
エドワード6世の貨幣発行の Third period (第3期) になって、1551年からクラウン銀貨の発行が開始されました。約400年にわたる歴代英国王のクラウン貨の歴史の中で、最初に発行されたクラウンとして存在感を有するコインです。表面に馬上の国王を描き、裏面の4分割された紋章盾は、左上の第1クォーターと右下の第4クォーターにフランスを象徴するフラ・ダ・リ (百合)、右上の第2クォーターと左下の第3クォーターにとイングランドを象徴する3頭のライオンを描いています。写真のクラウン貨は1552年銘でミントマークは Tun (樽)、状態は Good VF です。
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エリザベス1世 1558〜1603年 S2582 ND (1601〜02年)Elizabeth II Crown直径約40.1mm 約30.1g
エドワード6世が15歳で早逝し異母姉のメアリー1世の治世を経て即位したエリザベス1世は、首長令を発布して英国国教会の基盤を確立し、スペインの無敵艦隊を撃退しました。エリザベスの晩年の Sixth Issue (第6期) になって、表面にエリザベス女王の老年像を大きく描き、裏面に紋章盾を配したクラウン貨が発行されました。歴史書に登場する女王の肖像画を彷彿させるコスチュームで、大変人気のあるクラウンのひとつです。写真のクラウン貨のミントマークは 「1」 で、女王の表情がはっきりと打ち出された EF クラスの良好な状態です。 |
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ジェームズ1世 1603〜25年 S2664 ND (1623〜24年)James I Crown直径約41mm 約30.1g
生涯を独身で通したエリザベス1世の崩御によりチューダー王朝は幕を閉じ、遠縁にあたるスチュアート王家に王位が継承され、スコットランド国王ジェームズ6世がイングランド国王ジェームズ1世として即位しました。ジェームズ1世のクラウンは、表面に馬上の国王を描き、裏面の4分割された紋章盾は、左上の第1クォーターと右下の第4クォーターにイングランドとフランスの組合せ紋章、右上の第2クォーターにスコットランドを象徴する1頭の立ち姿のライオン、左下の第3クォーターにアイルランドを象徴するハープが配置されています。写真のクラウン貨は、ジェームズ1世の Third Coinage (第3期) に発行されたコインで、ミントマークは Lis (百合)、状態は Good VF です。 |
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チャールズ1世 1625〜49年 S2756 ND (1630〜31年)Charles I Crown直径約41mm 約30.1g
チャールズ1世のクラウンは、国王の治世下で発行されたタイプ、議会の下で発行されたタイプ、Civil War (内乱) の時代に発行されたタイプなど多岐にわたり、ミントもロンドンのタワーミントだけでなく、地方で鋳造されたタイプも多く、その分類は複雑を極めています。写真のクラウン貨は、表面に馬上の国王、裏面の4分割された紋章盾の配置はジェームズ1世のクラウンと同様、英仏の組合せ紋章を描いています。現品はロンドンにあるタワーミントで発行されたタイプ (2b1) で、ミントマークは Plume (羽根飾り)、状態は Good VF です。 |
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コモンウェルス 1649〜60年 S3214・ESC6 1653年Commonwealth Crown直径約41mm 約30.1g
ピューリタン (清教徒) 革命により、1649年にチャールズ1世が処刑されると、イングランドは約11年間の共和制に移行しました。コモンウェルスのクラウンは、表面にイングランドを象徴する白地に赤い十字を描いた「セント・ジョージ・クロス」を配し、裏面の紋章盾は左側がセント・ジョージ・クロス、右側にアイルランドを象徴する「ハープ」が配置されています。また、この時代のコインは、ラテン語の銘文がローマ・カトリックに結びつくものとして忌避され、英語で記されています。写真のクラウン貨のミントマークは Sun (太陽)、ハンマード・コインの状態としては EF クラスです。 |
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オリヴァー・クロムウェル 1658年 S3226・ESC10 1658年Oliver Cromwell Crown直径約40mm 約30.1g
ピューリタン (清教徒) 革命の指導者オリヴァー・クロムウェルは、終身の護国卿に就任すると、国王気取りで自身の肖像を描いた貨幣を鋳造しました。このクラウン貨から貨幣の製造がハンマード・コインからミルド・コイン (機械打ち) に転換し、コインのつくりが格段に進歩しました。裏面の紋章は第1クォーターと第4クォーターにイングランドを象徴する「セント・ジョージ・クロス」、第2クォーターにスコットランドを象徴する青地に白いX字型の斜め十字を描いた「セント・アンドリュー・クロス」、第3クォーターにアイルランドを象徴する「ハープ」を配し、中央にクロムウェルの紋章 (左後片足立ちのライオン) が配置されています。クロムウェルのクラウンは肖像の首の部分に極印のひび割れ (Die flow) のあるコインが多く見られます。写真のクラウン貨は Die flow が目立たず、Good EF の良好な状態です。 |
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チャールズ2世 (1660〜85年) 第1肖像Charles II Crown first bust直径約40mm 約30.1g
クロムウェルの没後、大陸に亡命していたチャールズ2世が王制復古によりスチュアート王家の3代目の国王に即位しました。チャールズ2世のクラウン貨は、ESCカタログでは約70種に細分されていますが、肖像に着目すると、第1肖像から第4肖像までの4タイプに集約されます。写真のクラウン貨は、第1肖像の下部に Rose (バラ) の Provenance marks (地金の供給地を示すマーク) があるタイプで、イングランド西部の鉱山から供給された地金であることを示しています。裏面の紋章盾は、上部のトップ・シールド (年号がある部分) と下部のボトル・シールドに、イングランドとフランスの組合せ紋章、右側のライト・シールドにスコットランドを象徴する1頭の立ち姿のライオン、左側のレフト・シールドにアイルランドのハープが配置され、紋章盾と盾の間にある空間 (in the angles) には「C」の組合せ文字がデザインされています。写真のクラウン貨の状態は、裏面中央部のガーター勲章部分に Adjustment marks (量目調整跡) があるものの Nearly EF (マイナスEF) です。 |
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チャールズ2世 (1660〜85年) 第2肖像・エレファント S3356・ESC33 (1666年)Charles II Crown second bust直径約39mm 約30.1g
第2肖像は、国王が頭に被ったリース (月桂冠) のリボンが湾曲しており (第1肖像のリボンは真直ぐ)、第1肖像の貨面よりも幾分小さめに描かれているのが特徴です。写真のクラウン貨は、肖像の下部に Elephant (象) の Provenance marks がある稀少なタイプで、アフリカのギニア産の銀地金で鋳造されたことを示しています。なお、裏面の紋章盾は、1663年銘 (第1肖像) から上部のトップ・シールドにイングランドを象徴する3頭のライオン、下部のボトル・シールドにフランスを象徴するフラ・ダ・リを描いた英仏分離紋章に変更されています。写真のクラウン貨の状態は、Good VF です。 |
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チャールズ2世 (1660〜85年) 第3肖像 S3358・ESC51 (1676年)Charles II Crown third bust直径約39mm 約30.1g
第3肖像は、貨面の肖像が第2肖像よりも幅広に描かれ、リースのリボンは、ほぼ真直ぐになっているのが特徴です。裏面の紋章盾は、第2肖像と同じく英仏分離紋章になっています。写真のクラウン貨は、表面の肖像の左側部分のフィールドに Over struck の痕跡 (古いコインを回収してその上から再刻印を重ね打ちした際に元のデザインの痕跡が残っている) が見られますが、AU/UNC クラスの良好な状態です。 |
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チャールズ2世 (1660〜85年) 第4肖像 S3359・ESC65A (1682/1年)Charles II Crown fourth bust直径約39mm 約30.1g
第4肖像 (老年像) は、リースのリボンの長さが第3肖像よりもさらに長く、鼻がやや大きいのが特徴です。裏面の紋章盾は、第2肖像、第3肖像と同じく英仏分離紋章になっています。写真のクラウン貨は、年号の1682年の「2」が「1」の上に重ね打ちされた Over date で、状態は EF です。 |
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ジェームズ2世 (1685〜88年) 第2肖像 S3407・ESC78 (1687年)James II Crown直径約39mm 約30g
スチュアート王家の4代目の国王に即位したジェームズ2世は、カトリック教徒であることを公言し、議会と対立したため、名誉革命で廃位に追い込まれました。ジェームズ2世のクラウンは、第1肖像と第2肖像に細分されますが、肖像の相違は僅かです。写真のクラウン貨は第2肖像で、後頭部のリボンがやや短いのが特徴です。ジェームズ2世の肖像は、前国王のチャールズ2世 (右向き) と逆に左向きになっており、これ以降、新国王が即位する度に貨幣の肖像の向きが左右に交互に変わるという伝統が確立されました。裏面の紋章盾は、上部のトップ・シールドにイングランドを象徴する3頭のライオン、右側のライト・シールドにスコットランドを象徴する1頭の立ち姿のライオン、下部のボトム・シールドにフランスを象徴するフラ・ダ・リ (百合)、左側のレフト・シールドにアイルランドのハープが配置され、裏面中央にはガーター・スターが描かれています。写真のクラウン貨は UNC クラスの稀少な状態です。 |
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ウィリアム&メアリー (1688〜94年) S3433・ESC85 (1692/inverted 2年)Wiliam&Mary Crown直径約38mm 約30g
名誉革命でオランダより招聘されたウィリアム3世は、チャールズ1世の孫にあたり、妻のメアリー2世 (ジェームズ2世の長女) と共同君主として即位したため、クラウン貨の肖像もダブル・ポートレートで描かれ、手前 (向かって左側) がウィリアム3世、奥 (右側)がメアリー2世です。裏面の紋章盾の配置はジェームズ2世のクラウンと同様ですが、紋章盾と盾の間にある空間 (in the angles) に、William の「W」と Mary の「M」の組合せ文字がデザインされ、裏面中央にウィリアムの出身家系であるオランダ・ナッソー家のライオンの紋章を配置しています。ウィリアム&メアリーのクラウンは1タイプのみの発行で、肖像面のつくりが浅打ちです。写真のクラウン貨は、年号の「2」が逆さまに打たれた数字の上に正しい向きに打ち直されたオーバーデートですが、EF クラスの良好な状態です。 |
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ウィリアム3世 (1688〜1702年) 第1肖像 S3470・ESC87 (1695年)Wiliam III Crown first bust直径約38mm 約30g
メアリー2世が1694年に亡くなった後はウィリアム3世の単独君臨が続き、この時代にはイングランド銀行が創設され、また、万有引力を発見したアイザック・ニュートンが造幣局長官に就任しています。ウィリアム3世のクラウンは、肖像面で3タイプに大別されますが、大英博物館に収蔵されている第2肖像は試作貨とされ、入手不可能です。第1肖像は、貨面の肖像の首下の衣服 (掛布) の線が丸くカーブしているのが特徴です。裏面の紋章盾の配置はウィリアム&メアリーのクラウンと同じで、裏面中央にナッソー家のライオンの紋章が描かれていますが、紋章盾と盾の間にある空間 (in the angles) はプレーン (無地) になっています。ウィリアム3世のクラウンは、貨幣改鋳で古いハンマードコインを回収して大量に鋳造されたため、比較的状態の良いコインが現存しており、写真のクラウン貨の状態は UNC クラスです。 |
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ウィリアム3世 (1688〜1702年) 第3肖像 S3474・ESC97 (1700年)Wiliam III Crown third bust直径約39mm 約30g
ウィリアム3世の第3肖像は、貨面の肖像の首下の衣服 (掛布) の線が直線に描かれているのが特徴です。裏面の紋章盾のうち、左側のレフト・シールドにあるアイルランドのハープのデザインは細部に3タイプの変種があり、写真のクラウン貨は1700年銘に見られる Third harp で、第1肖像のハープ (First harp) とは微妙に異なっています。写真のクラウン貨の状態は UNC です。 |
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アン (1702〜14年) 第1肖像VIGO S3476・ESC99 (1703年)Anne Crown first bust直径約39mm 約30g
ウィリアム3世が亡くなると、メアリー2世の妹のアン女王 (ジェームズ2世の次女) が即位しました。アン女王のクラウンは肖像面に着目すると、第1肖像から第3肖像までの3タイプに分類され、裏面の紋章盾は1707年に施行されたスコットランドとの連合法 (The Act of Union) の前後によって、連合前 (Before Union) と連合後 (After Union) の紋章に大別されます。第1肖像は、貨面に描かれた肖像の大きさがやや小ぶりで、頭頂部の2つのほつれ髪の高さが低いのが特徴です。写真のクラウンは、肖像下に VIGO の Provenance marks (地金の供給地を示すマーク) がある1703年銘です。VIGOとは、1702年のスペイン継承戦争の際に、VIGO湾の海戦で捕獲した地金で鋳造したことを記念したものです。裏面の紋章盾はBefore Unionの紋章で、上部のトップ・シールドにイングランド、右側のライト・シールドにスコットランド、下部のボトム・シールドにフランス、左側のレフト・シールドにアイルランドを配置し、裏面中央にはガーター・スターが描かれています。写真のクラウン貨の状態は EF です。 |
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アン (1702〜14年) 第2肖像 S3602・ESC108 (1708年)Anne Crown second bust直径約39mm 約30g
アン女王の第2肖像 (1707〜08年銘) は、貨面の肖像が第1肖像よりも大きく描かれ、頭頂部のS字状のほつれ髪の高さが高いのが特徴です。裏面の紋章盾は After Union の紋章に改定され、上部のトップ・シールドと下部のボトム・シールドにイングランド (3頭のライオン) とスコットランド (1頭のライオン) を組み合わせたグレート・ブリテン、右側のライト・シールドにフランス、左側のレフト・シールドにアイルランドを配置しています。写真のクラウン貨は、紋章盾と盾の間にある空間 (in the angles) に Provenance marks (地金の供給地を示すマーク) としてプルーム (羽根飾り) が描かれており、ウェールズの鉱山から供給された地金を表わしています。写真のクラウン貨の状態は Good EF です。 |
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アン (1702〜14年) 第3肖像 S3603・ESC109 (1713年)Anne Crown third bust直径約39mm 約30g
第3肖像 (1713年銘) は、第2肖像の頭髪と異なり、カール (巻き毛) の曲線が強調された描写が特徴です。裏面の紋章盾の配置は After Unionの紋章で第2肖像と同じですが、紋章盾と盾の間にある空間 (in the angles) にバラとプルーム (羽根飾り) の Provenance marks が描かれており、鉛精錬会社から供給された銀地金であることを示しています。写真のクラウン貨の状態は、表面の下部に Adjustment Marks (量目調整跡) があるものの AU/UNC クラスの良好な状態です。 |
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ジョージ1世 (1714〜27年) S3640・ESC114 (1723年)George I Crown直径約39mm 約30.1g
スチュアート王家最後のアン女王が世継ぎを残さずに亡くなると、英国王位は、ウィリアム3世が発布した王位継承令に基づき、スチュアート王家の血を引くプロテスタントとして、ドイツ・ハノーヴァー選帝侯のジョージ1世に継承されました。ジョージ1世はジェームズ1世の曾孫にあたりますが、英語を話せず、政務を内閣に委ねたため、責任内閣制が定着しました。ジョージ1世のクラウンは、1タイプのみの肖像ですが、裏面の紋章盾が改訂され、上部のトップ・シールドにグレート・ブリテン、右側のライト・シールドにフランス、下部のボトム・シールドにアイルランドを配置し、左側のレフト・シールドにハノーヴァー家の紋章が加えられ、裏面中央部にはガーター・スターが描かれています。写真の1723年銘のクラウン貨は、紋章盾と盾の間にある空間 (in the angles) に Provenance marks として「SS」と「C」のイニシャルを交互に配し、南海会社 (South Sea Company) から供給された地金で鋳造されたことを示しています。写真のクラウン貨の状態は、Good EF です。 |
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ジョージ2世 (1727〜60年) 若年像 プルーフ S3686・ESC118 (1732年)George II Crown young bust直径約40mm 約30g
ハノーヴァー王家の2代目の国王に即位したジョージ2世は、ドイツ生まれで、父王同様、英語は不自由でした。ジョージ2世のクラウンは、若年像と老年像に大別されます。若年像は、国王の頭髪が左肩の後ろへ垂れており、首の下の着衣が丸首になっているのが特徴です。裏面の紋章盾の配置は、ジョージ1世と同じですが、写真のコインは紋章盾と盾の間にある空間 (in the angles) にバラとプルーム (羽根飾り) の Provenance marks が描かれ、鉛精錬会社から供給された銀地金であることを示しています。写真のクラウン貨は、1732年銘のプルーフ FDC です。 |
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ジョージ2世 (1727〜60年) 老年像 LIMA S3689 ・ESC125 (1746年)George II Crown old bust直径約39mm 約30.1g
ジョージ2世の老年像は、国王の頭髪の一部が左肩の前にも垂れており、首の下の着衣のデザインが詰襟状に描かれているのが特徴です。写真のクラウンは1746年銘で、肖像下に LIMA の Provenance marks があります。LIMA の銘文は、アンソン提督が南米ペルー沖でスペインの私掠船から捕獲した地金で鋳造した貨幣であることを記念しています。写真のクラウン貨の状態は AU です。 |